それは昨日のこと。温めたレトルトカレーを食べながら、ためていた録画を消費するためにBSNHKでやっていたルーブル美術館の番組を見ていました。
ルーブル美術館 美の殿堂の500年(2)「太陽王が夢見た芸術の国」 - NHK
その中で静物画についての話題になり、注目を集めたのはこちら的な感じで紹介された絵のインパクトがあまりにでかすぎました。それがこちら。
『赤エイ』ジャン・シメオン・シャルダン
1725年/油彩・キャンバス/114.5×146/フランス・ルーブル美術館蔵
画像はルーブル美術館デジタルコレクションより
なんだこれは
そもそもこの時代にエイが食べられていたのかとか色んな疑問がわいたので、個人的に気になったところを調べてみました。でも美術用語ばっか並べられるとそれだけで読む気失せると思うので、出来る限りゆるく噛み砕いた感じに解説していけたらなーと思います。個人の趣味の範囲なのでそんな詳しく書けるわけではないですが、まあちらっと見てやってもええでって方はゆるりとよろしくお願いします。
では始まりまーす。
1.そもそもこの絵描いた人どなたですか
ジャン・シメオン・シャルダン(1699~1779)は18世紀フランスで活躍した画家です。
ちなみに18世紀フランスはヴェルサイユ宮殿が出てくるザ・フランスって感じの頃です。
この作品で王立絵画・彫刻アカデミー……すっごくでかい規模の芸術振興委員会みたいなもんですかね。そこの正式な会員として認められ、その後も静物画や風俗画を中心に作品を描いていたようです。他にも色んな作品があるのでざっと見てきたんですが、バランスが整っている配置構図と落ち着いた色彩に際立つ陰影表現、そしてものすごい描写力。確かに1枚くらい欲しくなります。
ジャン・シメオン・シャルダンによる絵画作品の一覧|MUSEY[ミュージー]
2.そもそもこの時代ってどんな絵があったんですか
18世紀フランスで主流だったのはロココ様式です。
いや分からんわってなるかと思うのでゆるふわっとした感じで表すとするならば、ロマンティック&スイート。柔らかな色調とふんわりした空気感で、さらに華やか。そして貴族や王族といった上級階層の人々が多く描かれているのも特徴です。「ぶらんこ ロココ」で検索すると、どっかで1度見かけたことがあるかもしれない絵が出てくると思いますが、今回の絵が色からして真逆なのがすぐ分かることでしょう。
《ぶらんこ》ジャン・オノレ・フラゴナール|MUSEY[ミュージー]
さて絵画の中にもジャンルというものがありまして、この時代はやっぱり歴史画が1番人気でした。簡単に言えば昔起きたことを絵にするという、まあそのまんまな題材です。分かりやすいとこでいうと、女性がフランスの国旗を持って革命しようぜ!みたいなものとかですね。
《民衆を導く自由の女神》ウジェーヌ・ドラクロワ|MUSEY[ミュージー]
その次に宗教画という、キリスト教関連のものが人気でした。まあつまり題材がすごく派手なものが人気だったってことですね。それを踏まえた上でさっきの絵を見ると、まあ……正直、ぱっとはしませんね?
でもそんな中で静物画や風俗画というマイナージャンルを描いて人気を得たと考えると、この方やっぱものすごい方だったんですね。
3.というかこの時代ってエイ食べてたん?
これが絵を見た時の第一印象でした(そこ?)
そもそも今の時代でもエイってエイヒレでしか食べないようなって気もしますが、そこで止まってちゃなんも始まらんので調べました。
とりあえず今の時代基準で調べると、意外にも北海道あたりでは普通に食用としてスーパーに出てるようで、煮つけとかにして食べるそうです。一応白身魚らしい。
そしてフランスでも茹でた身をバターソテーにしたり、テリーヌにしたりと普通に食べられているようです。海沿いの地方では伝統料理にもなってるそうです。
しかし頑張って調べてもなかなか情報が出ず、エイはフランスの庶民料理くらいのワードしか見つけられませんでした。とりあえず食べてるってことは分かったので、まあよしとしましょうか……このまま調べ続けたらキリないもんね……。
4.せっかくなので絵をじっくり見てみる
まあやっぱ最初に目がいくのはエイですよね。身が切り取られちゃってまあ……。この状態で放置ってのもなかなか怖いとこではありますが、そりゃそうよ冷蔵庫ないもん。
エイの顔は生きてれば可愛く、干からびたらモンスターのように豹変しますが、ちょうど中間くらいなとこなのか何とも言えない気味悪さがありますね……。
そして骨がこんにちはしてるとこを見ると、わぁエグイこと。しかもめっちゃ緻密に描かれているので、技術すごいなとやっぱ怖いながとっかえひっかえにやってくる。
こんだけ描いてるなら他もそりゃすごいことでは、と思って猫ちゃんの下あたりに描かれた牡蠣を見ると、意外にもあっさりしたタッチで描かれています。
まあエイをメインにしたいならそこまで細かく描かない方が映えますわよね。でも遠目で見て牡蠣や~って見せる技術はさすが。描きこみ量に差をつけて絵を魅せるテクニックというのは今のイラストにも共通する部分があると思うので、美術史受け継いでるわ~って頭悪そうな感想を抱きます。
そしてこの絵で癒しを与えてくれる偉大な猫ちゃんです。試しに猫ちゃん隠して絵を見てもらっていいですか? あまりに悲惨すぎやしません? もう怖いっていう印象以外に何も思いつかない。番組でも猫ちゃんいるといないじゃ大違い(超意訳)って言ってましたよ。
そして猫ちゃんがいることでエイの中身がまあコントラストはっきりするわけで。猫ちゃんとエイの対比……可愛らしさと気味悪さ……計算されている……。この人絶対頭がいいんだ、私には分かるぞ……。
というわけで、ゆるいというより頭の悪そうな解説をお送りしました。
でも正直最初何も分かんないで見ると、そんな大層な言葉出ないの当たり前なんですよね。しかも前知識なければなおさら。「うわめっちゃ好き~!」とか、「なんかすげぇ」くらいから始まってもいい気がします。今回なんて「なんだこれ」ですからね。
また気になった作品があれば書いてみたいなと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
----
今回すごくお世話になったサイト様
MUSEY [ミュージー]|世界のアート・絵画を解説するオンラインミュージアム
西洋絵画、西洋美術の画像・壁紙と解説 : サルヴァスタイル美術館TOP (salvastyle.com)
【追記 2022/7/16】
何気なく動画を漁っていたら見つけてしまいました。
【華麗なるロココ】エイを描いた超深い理由とは!?衝撃の五郎説アリ!!【シャルダン「赤エイ」】 - YouTube
あの山田五郎さんのチャンネルで解説があがっていたので、もっと知りたい方はぜひこちらを。
個人的ポイント
・エイの寓意に感心
・なぜか既視感を覚えるシャルダンの自画像
・エッ同じ絵画を例に出してる&そこつながりあったんですか