コーヒーの思い出話です。
今でこそ色んなコーヒーを楽しんでますが、最初の頃はアイスコーヒーにガムシロ3つとかいう、もはやコーヒーの色をしたガムシロ飲んでたくらいには苦さに慣れませんでした。
でもそこまでしてなぜ飲みたかったのかと思い出してみると、毎朝缶コーヒーを飲んで仕事に行っていた父の姿をかっこいいと思ってたのがあるなぁと。
父は整形外科の医者で、私と妹より先に家を出て毎朝病院へ行ってました。当時その病院には整形外科を担当できるひとが少なかったようで、家で一緒に夕飯を食べていてもポケベルが鳴ればすぐに連絡を取って、そのまままた病院に行ったり、当直で帰ってこない日もあったりと忙しそうでした。
それでも土日に休みがとれた時は時期によってはハゼ釣りに連れて行ってくれたり、連休が取れたら家族旅行したりと優しい父でした。
ですが中学生の時に、珍しく私と妹より遅く家を出た父はそのまま二度と帰ってこないひとになりました。
そして去年でちょうど父のいた時間といない時間が半々、これからいない時間が長くなります。
そんな時にバイトの休憩中、ふとあの缶コーヒーが目に入り、『そういや今まで飲めなかったけど、どんな味のものなんだろうな』と気になって購入。
きっとブラックコーヒーなんだろうなと思いながらプルタブを開け、いざ飲んだわけです。
えっ甘っ!?
毎朝父が飲んでいたのはこれでした。
最初こそめちゃくちゃびっくりしましたが、朝何も食べないひとだったので、これくらい甘いのぶちこまないと頭働かないかとだんだん納得。
記憶は声から消えていくというように、思い出の中で動く父は無声映画のようにただ口が動くだけになってしまいました。
それでも毎朝「行ってきます」と言いながら、あの缶コーヒーを片手に家を出る姿はずっと忘れないです。
思い出話に長々お付き合いありがとうございました。